こんにちは、モーガンです!Follow @tsukubanosorani
ありがたいことにブログを読んでくださった方から質問をいただきました!(ウレシー)なんでも初めて買付が通った物件(※)なのに、契約直前に検査済証が無いことを知らされたとか。このまま購入するかどうか迷っているそうです。
※買付が通る=売主と買主の間で金額交渉が成立すること。これを受けて正式な契約プロセスに入ります。
検査済証はその建築物の遵法性を証明するものなので、それが無いのはショックですよね。初めて購入する物件なら、購入して良いのか、悪いのか迷ってしまうかと思います。
「検査済証がない」ということは古い建物では良くあることです。国土交通省によると最近でこそ87%の建物で検査済証がありますが、平成10年築の建物では38%しかありません。昭和の建物などもっと古い建物はさらに数値は低いとみて間違い無いでしょう。
私も初めて検査済証が無い物件に出くわした時は本当に迷いました。
「遵法性がわからないって怖いなぁ。耐震性がなくて地震で建物が崩れちゃったらどうしよう。。。」
「立地も利回りもすごく良いんだよなぁ。。会社を早退して現地調査に行ったり、寝ずに事業計画も練ったし、、、諦めたく無いなぁ。。」
ツイッターでフォロワーの方々に、検査済証がなくても購入するかどうか、質問してみました。答えは買うが優勢なものの、買わないと言っている人も一定数いらっしゃり、やっぱり悩ましい問題のようです。
(ツイッター本文は建築済証とありますが、検査済証の誤植です。すいません。。。)
建築済証が無い物件を買うことはありますか?
— モーガン@30代からの不動産投資 (@tsukubanosorani) 2019年1月20日
私の場合は、やむなく見送ったケースもあれば、そのまま購入したケースもあります。この記事では、以下の二つに焦点を置いて検査済証の無い物件を購入するかどうかについて書きたいと思います。
- そもそも検査済証って何?不動産投資家にとってどんな意味を持つの?
- 検査済証が無い物件を購入する、しないの判断基準とは?
結論としては物件の魅力度や自分のリスク許容度に応じて購入の判断をすることになります。ただ、それだけでは抽象的でわかりにくいと思うので、私が実際に経験した二つの物件事例をもとに具体的に書きたいと思います。
皆さんの判断を助ける材料になれば幸いです!
コンテンツ
検査済証って何?
先にも書いた通り、検査済証はその建物の遵法性を証明する文書になります。
そもそも建物を建てる際には2回(規模が大きいものは3回)、役所に申請し、承認を受けないといけません。
建築基準法やその他の法令に準拠した建物であることを証明する申請書、設計図書などの資料を持って申請します。耐震性が十分か、土地に対して建物の面積や容積は法令の範囲内かなど、いわゆる違法建築になってないことを証明するプロセスです。
1回目の申請は、工事着手前に行います。これを「建築確認」と呼びます。
「工事着手前に法令に準拠した建物を建てるので、工事着工を許可してください」と申請し、役所から承認を得るのです。そして役所から承認した証明として受け取る文書を確認済証(確認通知書とも言う)と言います。この確認済証がなければ工事着工できません。
2回目は工事完了後に行います。これを「完了検査」と呼びます。
完了検査は、建築確認時に申請した設計通りに、実際の建物が建ったのかを確認するものです。建築確認で申請した設計から勝手に増改築を加えたりしてないか検査されます。そして合格した時に発行される文書が検査済証になります。
検査済証は違法建築でないことを証明する唯一の文書です。
検査済証を売主が紛失してしまうケースがあります。ただ、紛失してしまっても再発行はされません。
その場合は役所の建築指導課に行き、建築確認時に申請された建築計画概要書を閲覧すれば解決することがあります。
その建物が完了検査を受けた物件であれば、検査済証番号が確認できることが多く、検査済証の代わりに遵法性を証明するものとして、台帳記載事項証明書を発行してもらうことができます。
紛失ではなく、元よりない場合があります。これは何らかの理由で完了検査を受けてないか、検査は受けたものの、指摘箇所を改善せずに合格できなかったかになります。
完了検査や検査済証を重要視しない時代に建てたため、単純に検査を受けなかったという場合もあれば、違法に増改築してしまった悪質な場合まで想定されます。検査済証がないということは遵法性を証明できないということには間違いありません。
検査済証を取得した後でも、違法に増改築してしまうケースもあります。
今回の記事では主旨が若干ずれるので深く言及しませんが、検査済証があっても物件購入にあたっては、建築計画概要書や設計図書と実物を見比べて違法な増改築がないことを確認しましょう。
(不動産売買仲介会社が事前に精査してくれているはずですが、念の為。)
不動産投資家にとって検査済証はどんな意味を持つのか?
先にも書いた通り、建物で古ければ古いほど検査済証が無いものの方が多くなります。しかし、昭和50−60年代の建物は古いと言えども、まだまだ現役です。
物理的に耐久性が十分あるものも多いですし、立地が良い場所に建っているものも数多く存在します。それが故に、地域によっては活発に取引されているのも事実です。
「検査済証はないものの、その他の条件はピッカピカ」というものに出くわすことだって考えられます。
遵法性を証明する検査済証の有り、無しは不動産投資家にとってどんな意味を持つのか考えてみたいと思います。
結論から言いますと建物構造と売却時にリスクがあります。
①建物の構造的に問題があるリスク
真っ先に考えられるのが、建物構造的に問題がある可能性です。耐震性に問題がある可能性だってあります。この地震大国、日本で耐震性の無い破茶滅茶な建物だった場合は大変ですよね。
検査済証がなくても、確認済証、建築計画概要書、設計図書が存在する場合があります。完了検査は受けなかったけど、建築確認だけはした場合です。
その場合、何も無いよりは建物の信頼性は上がると言えるかもしれません。
有識者であれば、それらを見ることで破茶滅茶な建物なのか、きちんと法令遵守したものなのか、推測できることがあるからです。(私のような素人だと難しいです)
確認済証があれば、少なくても着工前の建築確認申請時は法令遵守し、耐震性にも問題ないことは証明されていると言えます。そのまま何も増改築せずに建築されたかどうかを、設計図書と外見から推測するわけです。
ただ、どこまで行っても外見からの目視には限界があります。いくら有識者でも建物内部までは確認できませんから、推測でしかなく、その構造に問題がないかを断言できないのは変わりません。
②売却時に買主が融資を受けられないリスク
金融機関によっては融資の審査の際に、検査済証の提示を求めることがあります。お金を貸し出す金融機関側としては、「法令遵守して担保価値がきちんとあるもの」に融資したいのは当然ですね。
つまり、検査済証が無い物件は融資が受けられる金融機関が限定される可能性があります。
物件を売却するときに買主が融資が受けられない場合が出るなどして、不利に働くことがリスクとしてあります。買主も限定されるので物件価格が下がる可能性が出てきます。
しかし、私がお付き合いしてきた地方銀行さんで検査済証の提示を求められたことはありません。違法建築には融資しないとは言われますが、検査済証の提示を求められたことは記憶にありません。
現に私が購入したアパートは検査済証がなくても、何の問題もなく、融資を受けることができました。
また、ツイッターで問いかけたところ、物件購入の実績が多い方でも問われたことがないと言う人もいます。
不思議と検査済表アリが条件といわれたことが無いんですよね
銀行によっても違うんでしょうが🤔— 肉欲棒太郎 (@nikuyoku_kikaku) 2019年1月20日
ご自身でその地域の金融機関に聞いてみて、どれだけこのリスクがあるのかを判断したほうが良いかもしれません。
何れにせよ、検査済証がない物件を購入するにあたっては、「建物構造の問題」と「売却時の融資の問題」があることを念頭に検討するのが良いかと思います。次にその2点を検討して購入した物件と見送った物件の事例をご紹介したいと思います。
事例1:検査済証が無いまま購入した物件
私は検査済証がないまま購入した物件を1棟保有しています。それは昭和56年築で旧耐震基準の木造アパートです。1700万円で購入しました。
↓物件のスペック詳細や購入経緯は以下の記事にまとめてあります。↓
売主さんと金額交渉が成立した後の融資打診の時のことです。銀行に要求されることもあるかもしれないと思った私は、売買仲介さんに検査済証の写しを要求した時に判明しました。
(大手だから安心ってことはないんだけどなぁ。。。レオパレスの界壁不備問題だって、姉歯耐震偽装事件だって大手がらみなんだけど。。まぁ、言っても仕方ないか。。。)
売買仲介さんは戸建ての仲介取引が専門だったので、「この年代の建物に検査済証がないなんて当たり前でしょう?」と詳しく調査していなかった様子です。
ぐちゃぐちゃ言っても始まらないですし、悪いことは即報告!ということで銀行の営業マンにその場で電話しました。
(土地の値段だけで担保評価も十分でてるし、未回収リスクが低い案件だから、銀行からすると検査済証の有無は関係ないのかもしれないな。あとは自分が納得できるかどうかの問題か。)
幸い銀行融資は問題ありませんでした。確かに以前お世話になった他の銀行でも検査済証が条件言われたことはなかったので、今回の呆気ない回答も、そんなものかという感じです。
しかし、私は釈然としません。検査済証は単に紛失しただけで、建築当時はあったのか、それとも、そもそも完了検査自体をなんらかの理由があって見送ったのか、、、とにかくモヤモヤします。
売買仲介さんは「そんなの当たり前でしょ!」の一点張り(もうちょっと対応して欲しいなぁ)、、、銀行さんは融資が焦げ付いた時の未回収リスクは低いので無関心(嬉しいですけど)、、、ということは自分で調べるしかありません。
確認済証に記載がある市役所の建築指導課を訪れました。
私見ですが、設計図書もしっかりしてるし、そんなデタラメな建物ではなさそうですね。そこまで心配されなくてもいいんじゃないですか?
結局のところ、正確なことはわかりませんでした。ただ、確かにこの建物は、地震で倒壊してしまうようなデタラメなものではなさそうとも思い始めました。
このアパートの所在地は東日本大震災で大きな被害を受けた地域にあります。震度は6弱、タンスや食器棚は倒れ、2週間ほどライフラインが止まった地域です。それでもこの建物の基礎や外壁にクラックなど目立った損害が無いからです。
建築指導課の担当者さんの言葉や売買仲介さんの言葉などから、耐震性・耐久性で入居者さんに迷惑をかけることはないと総合的に判断し、購入の決断をしました。
将来売却した時に買主の銀行融資にネガティブに働くことは無い。
- 土地だけで担保評価は十分でる。
- 周辺銀行も含めて、融資を出す上で検査済証の有無を問題視していない。
- 仮に買主に融資が出なくても、建物を200万ほどで解体し、土地として売却しても利益が出る。
- 全く売れなくても最大損失は1700万円。許容できるリスクである。
構造上問題がある物件では無さそう。
- 確認済証はとっており、耐震や法令遵守した設計図書が存在する。
- 外見から設計図書の通り建てられたと推測できる。
- 東日本大震災などの災害でも問題がなかった。
リスク以上に魅力的な立地で入居者さんに良い住環境を提供できることの嬉しさが購入の判断を後押したのです。
逆に購入を見送った物件もあります。それが次のお話です。
事例2:私が購入を見送った物件
検査済証が無い物件の購入を見送ったこともあります。
まだ不動産投資を初めて間も無く、物件を保有していない10年前のことです。事例1のアパートと同じように融資打診の時に判明し、それを理由に売買仲介さんに契約しない旨を伝えました。
その物件は5000万円ほどの鉄筋コンクリート(RC)造のマンションでした。築10年とまだ築浅だったのと、当時少なかった打ちっ放しの外壁がオシャレな物件でした。これを賃貸に出したらどれだけ楽しいだろうとワクワクしながら進めていた案件です。
この建物が事例1と違ったのは、土地よりも建物の方が評価が高かったことです。
積算評価にして建物が3500万円、土地が1500万円という評価でした。つまり、3500万円分が検査済証がなく、担保に疑問をもたれる可能性があると当時解釈したのです。
売却時に土地の1500万円分しか評価されず、買主が銀行融資を十分に受けられないと、物件価格を下げざるを得なくなります。超お金持ちが現れて融資評価とは無関係に現金を積んで買っていくというエリアでもありません(東京都内ならそういうエリアもあるんでしょうが、私が投資対象にする茨城県にはあまりありません)。
3500万円という大きい金額は、まだ1棟も保有しておらず、事実上、不動産投資未経験の私には許容できるものではありませんでした。検査済証がないことが判明した直後に、検討中止を申し入れたのです。
要は自分で納得できるかどうか
ここまで検査済証がないまま購入した物件と見送った物件の両方の事例をご紹介しましたが、この記事を書くきっかけとなったブログ読者の方はどんな決断をされたと思いますか?
メールで教えていただいたのですが、物件購入を「見送った」そうです。
建設業で働かれているということで、少しでも建物に不安があるまま、入居者さんに貸し出すのは納得が行かないと考えたそうです。
これはこれでとても立派な判断だと思います。
冒頭で申し上げた通り、検査済証がない物件を購入するかどうかは、物件の魅力度に対して許容できるリスクかどうかで判断していくことになるかと思います。
検査済証が無いから「絶対買ってはいけない」とか、「買っても大丈夫だよ」という法則があるものではありません。
不動産賃貸事業運営の中で経営判断していくことなので、その人その人で答えが違ってくるものなのではないかと思います。今回ご紹介した事例が頭を整理するきっかけになればこの上なき幸せです。
不動産投資ではしばしば難易度の高い判断を求められる時がありますよね。なるべく安全に不動産投資をしてほしいという重いから、そのプロセスを10ステップにまとめました。
こちらの記事があなたの不動産投資の一助になると嬉しいです!