こんにちは、モーガンです!
前回の記事では、新弟子のうさ吉が見つけた築13年、利回り10%の「コーポ・モーガン」について、その物件概要書から事前に確認するポイントを読み解きました。
読み解いたポイント↓
7つほど注意するポイントが見つかりましたが、中でも
- 接道している道が建築基準法上の道路なのか
- 建蔽率、容積率をオーバーではないか
という2点が要確認事項として浮かび上がってきました。
詳しくは前編の記事に書いてありますので、まだ読んでいない方は以下のリンクからどうぞ。
今回の記事は、その続きとして、不動産屋さんから入手した資料をベースに、収益物件の「資産性」を机上で評価する方法をご紹介します。収益物件の評価をするプロセスの中で、私はこの作業をStep3に位置付けています。
机上評価のStep1〜5
ここで言う資産性とは、銀行の担保評価額のことで、早い段階でそれを把握しておくことは、効率的に物件を選定する上で大事になってきます。
自己資金だけで購入できる少額の物件を除いて、どんなに収益性が高い物件であっても、その担保価値がなければ融資が受けられず、購入することはできません。内見に行くだけ時間の無駄になってしまいます。
そこで机上評価の段階で、銀行が見出すであろう担保価値を推定することが必要になってきます。
そして、担保価値と買値との差が小さければ、物件を良い融資条件で購入できる可能性が高まります。
逆にその差が大きければ、自己資金を多く出すように求められた上で融資金額を制限されたり、リスクが高いとみなされ金利を引き上げられたり、最悪の場合、融資額の全てが否決されたりしてしまいます。
この場合は、買値に対して指値して値切ることを前提に検討をしていく必要が出てくるでしょう。
この中編では、私が実践している「銀行が見出すであろう担保価値を推定する方法」を2つご紹介し、コーポ・モーガンの担保価値を実際に計算します。それができれば、指値する金額や次の収益性評価をする上で注意する点を机上で評価できるようになります。
まだできない人はぜひ頑張って読み進めてみてくださいね!いずれもすごく簡単な方法ですよ!
コンテンツ
方法1:固定資産税評価額から担保価値を推定する
まず最初に、担保価値を推定するのに手っ取り早い方法をご紹介します。それは固定資産税評価証明書もしくは公課証明書に書いてある土地と家屋(建物)の固定資産税評価額を合算する方法です。
これです↓
引用:http://www.sato-legaloffice.jp/fudosan/koteishisansyomei.html 佐藤卓哉司法書士事務所「固定資産評価額とは?」
この資料は不動産屋さんが持っている場合があるので、貰いましょう。
コーポ・モーガンの土地と建物の固定資産税評価額を合算した金額は以下の通りでした。
土地 | 15,000,000円 |
---|---|
家屋(建物) | 7,000,000円 |
合計 | 22,000,000円 |
これが担保価値になります。
この固定資産税評価額は、市区町村が固定資産税を計算するために設定した金額のことです。毎年、国土交通省の土地鑑定委員会が正常価格を算定して公示した価格の70%を目安に設定されています。これを公示価格といい、時価に近いとされています。
つまり、固定資産税評価額は時価の70%程度に相当すると考えることができ、銀行が算出する担保価値も時価の60-80%程度の場合が多いと言われることから、固定資産税評価額を銀行の担保価値として推定することができるというわけです。
固定資産税評価額を使用するメリット
この固定資産税評価額を合算するという方法の良いところは、単純な足し算で瞬時に担保価値を見出せるところです。日々何件も不動産を評価する身としては、電卓さえあれば簡単に計算できるので楽チンです。
固定資産税評価額を使用する時の注意点
ただし、都心の物件は過小に評価をしてしまうことがあるので注意が必要です。都心の物件は時に高額で取引されることも多く、固定資産税評価額のベースとなっている公示価格と時価の乖離が大きくなってしまう場合があります。
その場合は国土交通省「土地総合情報システム」の不動産情報取引検索で物件があるエリアを検索してみてください。実際に取引された土地の平米単価(㎡)が調べられます。
その平米単価と評価対象物件の土地面積を掛け算すれば時価になるので、その70%を固定資産税評価額の土地の価格と置き換えることで精度を高められることがあります。
また、固定資産税証明書や公課証明書は、不動産会社さんが売主さんから委任状を取得して、役所に取りにいく必要があるので、手元に届くまで1-2週間を要してしまうことがあります。そのため売り出し直後の物件では、まだ不動産会社さんも入手していないことも多いです。
そこでもう一つの方法をご紹介します。
方法2:積算価格から担保価値を推定する
積算法によって算出された積算価格も担保価値を推定することに利用できます。
積算価格は、土地の相続税路線価と建物の再調達価格を利用して算出します。
この相続税路線価は相続税を算出するために、公示価格(≒時価)の80%ほどで設定された地価を指します。先にも述べた通り、銀行の担保価値も時価に対して60-80%で設定されますから、この積算価格も推定するのに十分使えるというわけです。
具体的な計算式は以下の通りです。
積算価格 = a.土地の価格 + b.建物の価格
- a.土地の価格 = 相続税路線価 ✖️ 土地面積(㎡)
- b.建物の価格 = 再調達価格 ✖️ 延床面積(㎡) ✖️ 残存耐用年数 ➗ 法定耐用年数
再調達価格は、対象の建物を新たに建築・購入するために必要な価格を指します。
b.建物の価格は築年数の経過に応じて減価するので、(残存年数分➗法定耐用年数)をかけることで、現在の価値に直しています。
それでは、コーポ・モーガンを例にして、相続税路線価や再調達価格を調べながら、実際に計算する方法を解説していきますね。
【無料ダウンロード】積算価格の簡易計算用エクセル
この積算価格の計算には、電卓を叩いても良いのですが、少しでも便利なようにエクセルを作っておきました↓
相続税路線価と再調達価格、法定耐用年数など6項目を入れれば積算価格が自動計算される仕様になっています。
もしよかったら、下のリンクからエクセルをダウンロードしてご自由にお使いください。
土地の価格計算:相続税路線価の調べ方
それでは積算価格のうち、「a.土地の価格」を算出してみましょう。まず調べる必要があるのが相続税路線価です。
相続税路線価は、地価マップにアクセスして、相続税路線価を選択後、住所を入力することで検索することができます。
コーポ・モーガンの住所を指定すると以下のように表示されました。
コーポ・モーガンは+マークのある場所です。コーポ・モーガンが接道している道は、公道ではないため(前編で触れた通り、建築基準法上の道路か要確認)、相続税路線価が表示されていません。
仕方ないので一番近い公道の相続税路線価で計算することにします。相続税路線価は「150D」と表示されていますが、アルファベットは一旦無視した上で、この単位は千円だということを覚えておきましょう。
つまり、150,000円/㎡になります。
よって、コーポ・モーガンの土地の積算価格は、
150,000円 ✖️ 127.00㎡ = 19,050,000円
になります。
建物の価格計算:再調達価格と法定耐用年数
次に「b.建物の価格」を計算します。その計算に使う再調達価格と法定耐用年数は、以下の表の通りです。
表:構造別再調達価格と法定耐用年数
建物構造 | 再調達価格 | 法定耐用年数 |
---|---|---|
木造・軽量鉄骨造 | 150,000円 | 22年 |
重量鉄骨造 | 180,000円 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 200,000円 | 47年 |
コーポモーガンは木造なので、再調達価格は150,000円、法定耐用年数は22年になります。
また、残存耐用年数は、法定耐用年数から築年数を引いて計算するだけでOKです。コーポ・モーガンは築13年なので、22年から引いて、残存耐用年数は9年となります。
よって、コーポ・モーガンの建物の価格を計算すると、
150,000円 ✖️ 134.00㎡ ✖️ 9年 ➗ 22年 = 8,222,727円
となります。
つまり、積算価格から推定できるコーポ・モーガンの担保評価は以下の通りです。
土地 | 19,050,000円 |
---|---|
建物 | 8,222,727円 |
合計 | 27,272,727円 |
積算価格を使用するメリット
固定資産税評価額と同じように、この積算価格も一度エクセルを作ってしまえば、数分で銀行の担保評価を推定できます。とても便利です。また、固定資産税評価証明や公課証明が手に入らなくても計算できるのが最大のメリットになります。
もう一つ便利なのは、積算価格の計算式を応用すると、数年先の建物が減価した時の担保評価がイメージできることです。先出のエクセルで向こう5年先までの積算価格を算出してみたのが下の表になります。
積算価格を使用する時の注意点
一つ頭に入れておきたいのは、担保価値を推定する上で、積算価格は高めに出がちだということです。時価の80%に設定される相続税路線価を利用しているので固定資産税評価額に比べて10%ほど高くりますし、何より土地の価値に補正を加えていないということがあります。
本来の鑑定評価では、土地の形状や接道の仕方によって掛け目をかけて金額を補正します。土地の形状が正方形だったり、太い公道に接道したりすると、その利用価値は高いのでより評価できますが、このコーポ・モーガンは残念ながらその逆です。その分掛け目で減算される可能性が高いですが、簡易評価なのでそこまでしていません。
参考)収益還元価格から担保価値を推定する
ここまでご紹介した固定資産税評価額や積算価格から担保価値を推定する方法は、両方とも積算法という評価方法に分類されます。このほかに、収益還元法で収益還元価格から担保評価を推定することもできます。
収益還元法では将来得られる収益から費用を差し引いて還元利回りで割って求めます(直接還元法という)。還元利回りとは、その地域で取引される相場利回りのことです。
収益還元価格 = (年間収益 − 費用) ➗ 還元利回り
収益還元価格を使用するメリット
低い利回りでも売れてしまう様な価値の高いエリア(都心など)であれば、ご紹介した積算法よりも収益還元評価の方が担保価値が高く出る可能性があります。このコーポ・モーガンも都心にあるので、収益還元評価を採用する銀行があれば、そちらに持ち込んだ方が良さそうです。
収益還元価格を使用する時の注意点
残念ながら、日本の銀行の7−8割は積算方法で担保価値を算出すると言われていて、収益還元法を採用する銀行はほんの一部です。実際に私の住む茨城県で収益還元法を採用しているの銀行は、1−2行しかありません。それが理由で私は、収益還元価格を計算することはあまりありません。
もしあなたの地域に収益還元評価を採用している銀行があれば、日頃から関係性を作っておきたいところです。そして、この時点で資料を送って担当者さんにより高く担保評価してもらえるか確認することをお勧めします。
買値と担保評価の開きが大きいと融資は出ないのか?
固定資産税評価額と積算評価から推定した担保評価は以下の通りとなりました。
コーポ・モーガンの担保価値と売値との差額
固定資産税評価額 | 積算価格 | |
---|---|---|
担保評価額 | 22,000,000円 | 27,272,727円 |
買値 | 48,000,000円 | 48,000,000円 |
差額 | -26,000,000 | -20,727,273 |
このコーポ・モーガンは築浅の割に利回りは10%と高い反面、その担保評価は買値と2000万円以上の差があることがわかりました。
しかし、担保評価が買値を下回っていることは珍しいことではありません。むしろ、銀行は担保評価を保守的に見ますので、2−3割、もしくはそれ以上下回ることの方が多いです。
仮に下回ったとしても、融資が出ないというわけではありません。融資で重要視されるのは、その物件の収益性です。収益性が高ければ、融資を余裕を持って返済できるからです(→この点はStep4の収益性評価で解説します)。
それに加えて、不動産投資家の財務力や信用力を総合的に評価され、それでも補えない分は自己資金を多く出したり、高い金利を求められたりすることで、融資が認められることもあります。
しかし、この新弟子のウサ吉が検討しているコーポ・モーガンに至っては、流石に開きが大きすぎるかもしれません。ウサ吉に自己資金がほとんどないとなると融資は否決されてしまうかもしれませんね。
私が不動産投資をしているエリアの銀行を想定すると、買値と担保評価の開きは大きくても2−3割にしておかないと融資の土台にのりにくい傾向があります。ウサ吉の場合自己資金は500万円ほど。そのほどんどが売買に伴う諸経費に消えてしまうことを考えると、2000万円以上の差額を埋めるのに対して足しになりません。
となると、買値4800万円に対して、1000万円から1500万円以上の指値を入れないと買えないかもしれませんね。
資料をもらう際に
と釘を刺されていたら、この物件は諦めて次に移った方が効率的かもしれません。
次は、いよいよエクセルを使って収益性を評価します。
具体的には、
- 収益性指標1:税引後キャッシュフローの推移、累計
- 収益性指標2:純資産増加額の推移、累計
をしっかりと金額で可視化して、この物件を購入する価値があるのかを見極めます。このコーポ・モーガンはウサ吉が期待するような物件なのかどうか、明らかにすることにしましょう。
続きはこちらの後編を読んでくださいね↓
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