必ず自分でレントロールを引き直した上で収支計算をするんだ。解説するね。
(この引っ掛けに気がつかないまま、買付だしちゃったんかい…。)
こんにちは、モーガンです!Follow @tsukubanosorani
今、不動産投資を始めたいという友人に購入の支援をしているんです。物件の評価の仕方や視察までなるべく詳しく解説するようにしています。
その中でドキッとすることがあるんです。この物件良くない?と相談してくれるのはいいのですが、リスクに気がつかないまま、ノリノリになっていることがあるんです。
気持ちはわかるんですよ。私も初心者時代に、高い利回りの物件を不動産会社さんに紹介してもらった時は、興奮して夜も眠れなくなりました。これを買えたら大金持ちかもしれないって。
初心者の時は、不動産会社さんが送ってくれた資料を鵜呑みにしがちです。十年選手となった今では、不動産会社さんが送ってくれた資料ほどいい加減なものはないと思うようになりましたが(笑)、初心者の人には物件概要書に書いてある想定満室賃料や利回りをそのまま信じてしまう人もいるようです。
(それがかぼちゃの馬車など数多くの悲劇を生み出していますね。)
この記事ではそんな初心者の人でも割高物件、儲からない物件を掴まないようにするために一番重要なレントロール(=賃借条件一覧表)の見方について解説したいと思います。
このレントロールの見方さえ間違わなければ、落とし穴にハマるリスクが大分少なくなります。「こんなはずじゃなかった…。」とならないためにも、必ず抑えてくださいね。
レントロールとは?
レントロールとは賃借条件の一覧表のことです。号室毎に賃料、共益費、敷金、駐車場利用の有無、入居日などが書かれており、現況の総賃料が確認できます。不動産会社さんに資料請求すると物件概要書と合わせて送られてくることが多いと思います。
特に決まったフォーマットはなく、準備の悪い不動産会社さんだと、要求しないと送ってこないケースすらあります(そういう場合はキチッと要求しましょう)。
空室ついては、募集賃料が書かれていることが多いです。募集賃料は不動産会社さんがこれくらいで募集すれば埋まるだろうと想定したものであることから、想定賃料とも呼ばれます。
弟子の亀吉から送られてきたレントロールを見てみましょう。3部屋空室があるものの、表面利回り(= 満室想定収入(年) ➗ 売買価格)が15%と書かれています。
これは確かに魅力的ですね。「誰かに買われてしまっては大変だ!」と急いで買付を出した亀吉の気持ちもわからなくはないです。
しかし、想定賃料をキチッと精査するまではこの利回りが正しいとは限りません。
先ほども書きましたが、想定賃料はあくまで不動産会社さんが「これくらいだろう」と鉛筆を舐めた数字でしかないからです。悪意のある不動産会社だと、想定賃料を不当に吊り上げて、利回りをよく見せようとすることもあるんです。
この物件の想定賃料は47,000円に設定されています。現況で住んでいる人の最低家賃と同額ですから、一見問題なさそうです。しかし、敷金が取れなくなってきているということも合わせて読み取り、違和感を覚えなければならない物件でもあります。
「敷金が取れないことを了承して入居させてる部屋があるということは、賃料の値下げ圧力もかかっているのでは?本当に47,000円の賃料で募集して入居が決まるのかな?」と。
亀吉は何も気がつかないまま、買付出しちゃったようですが、実はここに落とし穴があります。
初心者がハマる落とし穴
想定賃料が現況住んでいる人の最低家賃に設定されているのは、問題なさそうに見えます。しかし、以下のレントロールを見てもそう言えるでしょうか?同じレントロールに追加情報を付け加えてみたものです。
少し違う景色が見えてきませんか?想定賃料「47,000円」の根拠になっていた201号室は、実は2年前に入居してます。2年経過した今では周辺の競合状況にもよりますが、数千円下がっていてもおかしくありません。
また、広告料が0ヶ月、2ヶ月、3ヶ月と月日の経過とともに徐々に増えてきているのがわかります。賃料が下がると利回りが低く見えてしまうことから、広告料を積んで荒っぽいやり方で無理やり入居者を決めた可能性も疑う必要がありそうです。
賃料が相場よりも高いのと引き換えに入居者に一部現金を還元して、短期的に入居させるなんていう手口も昔は良くありました。
不動産会社さんが想定した家賃だから間違いないだろうというのはお人好し過ぎるんです。
私が物件周辺の賃貸仲介店舗にヒアリングしたところ、想定賃料が高すぎることがわかりました。新しい想定賃料で引き直したレントロールは以下の通りです。
聞いて見たところ、47,000円というのは、2年前の時点でもかなり高すぎる賃料だったようです。相当無理したんですね。現在の家賃は34,000円が妥当ということでした。
それを踏まえるとこの物件の利回りは、13.7%ということになります。105号室(78,000円)など高い賃料で入居している人が退去してしまうとさらに利回りは悪化します。
本来であれば、その分も引き直した上で買付金額を考えるべきだったということです。
落とし穴を回避する方法
想定賃料を吊り上げる手口はまだ可愛い方です。他にも悪質な手口はあります。
- 入居してないのにもかかわらず、レントロールに在室とウソを書いて、かつ空室を全てカーテンで覆い隠すことでバレないようにする。
- 売り出し期間中だけ知人やアルバイトにお金を払って高い賃料で入居させ、売買が完了するとともに退去させる。
信じられないかもしれませんが、実際に起きていることです。
買う側としては十分注意する必要がありますね。
では、これらの落とし穴はどうすれば回避できるのでしょうか。それは買付を出す前に必ず以下をすることです。
- 想定賃料や募集費用(広告料等)は、ホームズやスーモで類似物件を確認するとともに、複数の物件周辺の仲介店舗にヒアリングすること。
- 必ず現地に赴き、実際にレントロール通りに在室しているか確認すること。
- 売買契約前に全賃貸借契約書をコピーなどで確認し、その現物を決済時に引き渡す約束を取り付けること。
亀吉のように賃貸仲介店舗に裏付けも取らず、ろくに現地も見ないで価格交渉や買付を出すことは絶対にやめましょう。
引き直したレントロールで収支計算すること!
上述した通り、満室想定賃料はレントロールを鵜呑みにせず、ご自身で調査しましょう。正しい満室想定賃料を把握してから収益性評価を行えば、失敗しない不動産投資ができます。
私は必ず自分で調査して引き直したレントロール、満室想定賃料を使ってその物件の収益性を判断しています。満室想定賃料が違えば、その物件から得られる税引後キャッシュフローや純資産の増加は絵に描いた餅でしかないからです。
参考までに私の収益性評価の仕方をご紹介します。使っている収益性評価のツールは以下の本についている付録です。
ツールの入力項目に引き直したレントロールの満室想定賃料年額を入力します。
そうすると引き直した賃料に応じた税引後キャッシュフローや純資産の推移がエクセルシートの右側に自動計算されます。
収益性をツールで計算すると一部屋の賃料の誤差が大きな影響を及ぼすことが理解できると思います。
こちらでご紹介した手順を踏んでぜひ確実な不動産投資をしてくださいね。
その他にも初心者の人が安心して不動産投資ができるように、物件探しから引き渡しを受けるまでのプロセスを注意点とともに書いています。こちらを合わせて読んでいただいて失敗のない不動産投資を実現してもらえれば嬉しいです!