不動産投資で失敗しないための最大のコツは、ズバリ、適切な「目標」と「不動産の取得方針」を策定することです。これさえできれば失敗することはないといっても過言ではありません。
以下のように目標と不動産取得方針をできるだけ具体的に策定しておくといいでしょう。
- 目標:3年で税引前キャッシュフロー250万円を達成する
- 方針:物件総額5000万円分を2−3棟に分けて購入する
- 自己資金:極力融資を利用し、自己資金は取っておく
- 物件価格:1000〜2000万円
- 表面利回り:16.7%以上
- 建物構造:木造アパート(耐用年数超過もOK)
- 金融機関:地元の信用組合
- 借入利率:2.1-2.5%
- 借入年数:15-20年
- 投資対象地域:信用組合の支店がある県内主要都市
「は?何言ってるの?面倒臭くない?利回りがいい物件の探し方が最大のコツでしょう!」って思う方もいるかもしれません。
それも確かに大事です。
ただ、それにも増して不動産投資をする上でもっとも大事なのは、不動産投資の目標設定とそれから導かれる方針を策定することだということを順をおってご説明したいと思います。
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目標設定と方針策定って何?なぜ必要?
目標設定というのは、年間どれくらい税引前キャッシュフロー(=経費・税金を支払い、借入を返済した後の最終的に手元に残る金額)が欲しいか目標設定することを言います。
そして、不動産の取得方針策定とはその税引前キャッシュフローを実現するための手段(=いくらくらいで、どのような物件を購入するか)を具体的に策定することです。
普段、仕事をする上で目標や方針が適切ではない時ってグダグダになったりしませんか?営業で言えば売り上げ目標が設定されてなかったり、低すぎると営業方針も定まらず、ダラダラとした空気が流れるだけで成果は上がりませんよね。
逆に過度に高すぎる売上目標を掲げてしまうとえげつない営業方針になり、お客さんや協力会社さんとギスギスしてしまう。これも仕事としては大失敗をするでしょう。
不動産投資も賃貸経営という仕事なので、目標や方針策定が適切に設定されていることがとても重要なんです。
どうしても最初に目標と方針策定をやってほしいです。その理由を次に説明しますね。
失敗する典型的な二つのタイプ
目標設定や方針策定を軽んじて失敗に陥っている人が結構います。その人たちは二タイプの失敗に陥っていることが多いです。
一つは、物件を紹介されても購入判断ができずに時間だけが経過して行く人です。
物件を見てはリスクが気になり、漠然とした不安で思考が停止してしまいます。挙句の果てには不動産会社さんから「意思決定ができない人=不動産投資(賃貸経営)に向かない人」という烙印を押されてしまい、待てど暮らせど良い物件の紹介が来なくなってしまうんです。
本来は「この物件を購入したら、自分が目標としている金額にどれだけ近づけるんだろう」と考えるべきですね。目標に少ししか近づかないのに大きなリスクがあるなら見送るべきですし、逆に目標に対して大きく前進するのであれば、必死にリスクをミニマイズする手段を探すべきですよね。
目標がたってないとそういった思考ができないんです。
もう一つのタイプは、物件を見ても良いのか、悪いのかよくわからないからと「エイヤッ!」で買ってしまう人です。色々見たけどわからないから、「とりあえず買ってから考えるかな、、、」と考えてしまう人がいます。案の定、不適切な物件を購入してしまい後悔するタイプです。
不動産投資の場合、最初の1棟で失敗してしまうと、リカバリーがききません。1棟目の失敗を2棟目でカバーするということは至難の技です。もし、1棟目が収支で回っていなかったり、資産性が著しく低すぎたりすると金融機関は2棟目に対してそもそも融資を出してくれません。リカバリーができないというのは2棟目を取得できないという意味なんです。
適切な判断基準を持っている人が成功する
上述した人たちは、これが良い物件だ!という判断基準を持っていないから、良い物件を購入することができないのです。
良い物件とは何でしょうか?私は良い物件とは私の目標の実現に近ずけてくれるものだと考えます。
どんなにピカピカに輝いて見える物件があっても、目標からそれてしまう物件はダメな物件です。
例えば、年間で税引前キャッシュフローを○○円得たい!という目標を掲げたにも関わらず、新築好立地の区分マンションを紹介されたとしましょう。そんな場所に不動産を持っていれば周囲に鼻高々です。
節税効果が高いのですが、賃料収入より維持費用の高い物件のように見えます。節税によって還付金が入るからいいや!と買ってしまうと何が起きるでしょう。
毎月赤字経営のものは2棟目以降の銀行融資がつかなくなってしまうことだってあるでしょう。そうすると毎年○○円得たい!という目標は未達のまま不動産投資は終了です。ピカピカに見える新築好立地の物件だって目標に近づかないのであれば、スルーするべきです。
目標をしっかり掲げていれば判断基準ができます。目標と照らし合わせてそれに沿った適切な物件だけを買っていくというのがキモなんです。
具体的な目標設定の方法とは?
では、具体的に目標はどのように立てるのでしょうか。設定の仕方を知らないと結構難しいです。確かに面倒臭くなって、「エイヤッ!」で買いたくなる気持ちもわかります。
ただ、その方法を知ってしまえば、そこまで難しくないので不動産投資家のスタートラインに立つと思って頑張ってください。
まずは目標の立て方です。その人の置かれた状況などによって色々な目標設定があると思います。年収が1500万円以上の高額所得者は節税を目標とした方がいいでしょうし、金融資産が5000万円以上あるならキャピタルゲイン(転売による売買益)を目標にすることもできるかもしれません。
ただ、30代で年収、金融資産もそこまでなく、もしくは初心者だという人であれば、賃貸収入によるキャッシュフローをベースにした投資が始めやすいと思います。
最初は賃貸アパートというもう一人の稼ぎ手が増えたと考えて目標設定していくのです。つまり毎月の希望額でいくら増えたらいいなと考えてみるところから始めましょう。
増えたらいいなと思う希望額?そんなの無限だよ。5倍でも10倍でも多いに越したことはないよ!という声が聞こえてきます。
確かにそうです。私もそうです。
ただ、流石に「ミドルリスク・ミドルリターン」と呼ばれる不動産投資で、そこまでは難しいでしょう。私の経験則になりますが、初心者の人はご自身の年収の半分くらいに設定されると無理がないと思います。
つまり、年収500万円の人だったら、年間250万円の税引前キャッシュフローです。実際に手元の残る金額は税金がひかれてしまうので少し減りますが、それでもこれだけの収入が増えればかなり心に余裕ができないでしょうか。
- 目標:3年で税引前キャッシュフロー250万円を達成する
アグレッシブな人なら2倍以上に設定したい!という人もいるかもしれません。決してできなくはないのですが、初心者で右も左もわからない時にキツキツの目標設定を立てると、過度な利益主義に走りがちです。仲間のはずの不動産会社さんや金融機関さんとギスギスした関係になったりするので注意が必要です。
ここ3年くらいは、まずは年収の半分で目標設定し、目標を達成したら、目標を引きあげるというやり方がいいと思います。
目標に準じて方針を策定する
目標に腹落ちできたら、どのような不動産を取得して実現するか、不動産取得の方針策定をします。
ここでは年収500万円の人が年間250万円の税引後キャッシュフローを目指すとします。日本で投資用不動産を購入する場合、税引後キャッシュフローは、良い物件ですと年間総賃料の2−3%、凄く良い物件で4−5%です。
この利回りを返済後利回りと呼ぶことにします。この返済後利回りを目標税引後キャッシュフローに割り戻すと、目標を達成するために購入するべき投資用不動産の総投資額が算出できます。
税引後キャッシュフロー÷ 返済後利回り = 総投資額
税引前キャッシュフロー | 返済後利回り | 総投資額 |
---|---|---|
250万円 | 2% | 1億2500万円 |
250万円 | 3% | 8300万円 |
250万円 | 4% | 6300万円 |
250万円 | 5% | 5000万円 |
この表をみてどう思いますか?返済後利回りが低いほど、物件は取得しやすいです。2%のものを取得していく方針にするのは簡単です。売主は可能な限り高く売りたい、つまり利回りを低く売りたいのでそういった物件を見つけるのは比較的簡単です。
ただ、返済後利回り2%を例にして言うと目標を実現するためには1億2千5百万円もの資金調達をしないといけません。金融機関から融資で調達することになりますが、現在の市況では年収および金融資産が数百万円だとすると、そこまで高額な融資は難しいかもしれません。
30代で年収、金融資産が低い人は一旦、返済後利回り4−5%のライン、つまり総投資額5000万円あたりが無理なくいいのではないかと思います。(もちろん、2−3%でも融資総額が総投資額に対して十分引けそうだったらOKですよ)
この記事では一旦、返済後利回り5%、総投資額5000万円として話を進めますね。
ところで、5000万円の物件を1棟購入していきなり目標達成するというのは怖くありませんか?
まだ賃貸経営の実力があるのかないのかわからないのに、いきなり5000万円というのは心理的な障壁があるでしょう。金融機関からも融資の際に同じように指摘されるかもしれません。
そこでこの記事では、1000−2000万円で返済後利回り5%の物件を2−3棟取得することで目標を達成することにします。一年に一棟ペースで段階的に達成することにすれば、3年で250万円の年間税引後キャッシュフローが実現できますね。
- 方針:物件総額5000万円分を2−3棟に分けて購入する
- 自己資金:極力融資を利用し、自己資金は取っておく
- 物件価格:1000〜2000万円
もちろん、まどろっこしいのは嫌いだ!5000万円一発ツモだ!というのも問題ないです。金融機関が融資してくれるのであれば、チャレンジするべきだと思います。そのほうが投資効率はいいですしね。
表面利回りは何%に設定するのが良い?
「よし、物件金額のイメージはついた!目標とする返済後利回りもわかったし、インターネットで物件情報を検索するぞ!」と言いたい所ですが、まだできません。インターネットなどで掲載されている投資用不動産の情報は表面利回りで掲載されているからです。ここで3種類の利回りがあることを理解しておいてください。
表面利回り | 年間総賃料 ÷ 物件価格 |
---|---|
実質利回り | (年間総賃料 ー 控除・諸経費) ÷ 物件価格 |
返済後利回り | (年間総賃料 ー 控除・諸経費 ー 返済額) ÷ 物件価格 |
返済後利回りは表面利回りから物件を維持するために必要な年間の「控除・諸経費」と借入の「返済額」を引いたものなんです。
諸経費は固定資産税、賃貸管理費、建物管理費などのことでです。
控除とは空室時の逸失賃料を控除することで、空室期間の減収のことを指します。
返済額は金融機関からの借入条件(借入金額、金利、期間)から計算される年間の返済額のことです。
この後、目標を実現させてくれる物件を探したいわけですが、物件の金額は1000−2000万円と定まったものの、返済後利回りではなく、表面利回りを求めないと自分がほしい物件の情報を探せません。
返済後利回り、実質利回り、表面利回りを計算してくれる便利なシミュレーションツールがあるので、それを使いましょう。不動産投資連合体の簡易収支シミュレーションです。
http://www.rals.co.jp/invest/info.htm
このサイトで以下を入力して、表面利回り、返済後利回りがいくらになるか想定しましょう。なお、借入条件(※)は私の地域の信用組合が貸し出す条件を書いています。
- 物件価格 : 1500万円
- 満室時想定年収 : 250万円
- 想定空室率 : 10%
- 諸経費率 : 20%
- 自己資金 : 100万円
- 借入金額 : 1400万円(※)
- 借入期間 : 17年(※)
- 借入金利 : 2.3%(※)
この条件にしたときに利回りと年間税引後キャッシュフローは以下の通りです。
- 年間手取り(注1) : 754,217円
- 表面利回り : 16.7%
- 返済後利回り : 5.1%
注1:不動産投資連合体の簡易シミュレーションツールでは手取りと表現されていますが、税引後キャッシュフローのことになります。
この表面利回り16.7%レベルの物件を2ー3棟、物件価格にして5000万円相当を買えば、目標の年間税引後キャッシュフロー250万円は達成できそうですね。
- 表面利回り:16.7%以上
ただ、実際物件情報を検索する際には選択肢があまりに限られてしまうので、14ー15%以上の物を検索しましょう。後に値引き交渉をすることで、最終的に16.7%を実現するという戦略的が良さそうですね。
不動産投資の物件情報サイトで検索すると、この条件に当てはまる物件はほとんどが木造で築20年以上になることがわかると思います。
これらの物件の多くは法定耐用年数22年を超過していますが、まだまだ全然使えます。法定耐用年数は所詮、税金を計算するときの基準でしかなくて、建物の耐久性としては全く問題ありません。
現実的には、1000−2000万円の耐用年数を超過した木造物件を数頭購入していく戦略となると思います。
- 建物構造:木造アパート(耐用年数超過もOK)
融資から逆算して方針を立てないと意味がない
上記のシミュレーションの借入条件はあくまで私の地域の信用組合のものです。最後にご自身の融資してもらえる借入条件を入れることで、その精度をあげましょう。
お気付きの方も多いと思いますが、不動産投資の旨味は融資をいかに引き出すかにあります。自己資金はほとんど使わず、他人のお金で投資活動ができるのが一番のポイントです。
なので融資してもらえる条件で方針を立てておかないとあまり意味がないんです。
みなさんがお住いの地域の金融機関をネットで検索し、借入条件を調べて見てください。
「金融機関名」と「不動産投資」や「アパートローン」などのキーワードで検索すると借入条件の情報が出てくるかと思います。
参考までに私の地域の金融機関の調査結果を書いておきますね。
金融機関名 | 融資対象地域 | 借入金利 | 借入金額 | 借入期間 | 利用判定 |
---|---|---|---|---|---|
地方銀行A | 支店がある1都4県 | 1-2% | 物件金額+諸経費まで満額可能 | 耐用年数の残存期間まで | × 残存期間がある物件で表面利回りが取れる物件がない。 |
地方銀行B | 支店がある1都2県 | 1-2% | 物件金額+諸経費まで満額可能 | 10〜15年 耐用年数超過もOK |
× 15年では目標に届かない。 |
信用金庫C | 県内のみ | 2%台 | 物件金額+諸経費まで満額可能 | 耐用年数の残存期間まで | × 残存期間がある物件で表面利回りが取れる物件がない。 |
信用組合D | 県内のみ | 2.1-2.5% | 物件金額+諸経費まで満額可能 | 15-20年 耐用年数超過もOK |
○ |
日本政策金融公庫 | 日本全国 | 1.16-1.76% | 4800万円まで | 10年 耐用年数超過もOK |
× 10年では目標額に届かない。 |
私の場合、信用組合Dを利用するのが現実的になります。借入期間が15-20年と長めに取れるため、年間の返済額が低く抑えらるからです。
一見、日本政策金融公庫の金利が1.16ー1.76%と低いので有利に思うかもしれません。しかし、借入期間が10年と短いです。この期間の短さは年間の返済額を大幅に引き上げてしまうので年間税引後キャッシュフローを目標とした投資の場合は使いづらいです。(キャピタルゲインを目的とした投資の時は使いやすくなりますが)
融資期間は17年以上引けないと目標を達成するのが難しいかもしれません。上述したシミュレーションの値を変更してその差を確認しておくといいですよ。
- 金融機関:地元の信用組合
- 借入利率:2.1-2.5%
- 借入年数:15-20年
金融機関が決まると物件を取得する地域も自動的に決まってしまいます。私の場合は「県内のみ」です。良く旅行に行くからとか、東京や大阪の方が資産価値がありそうだから、自分の住まいから遠い東京や大阪に物件を探そうとする人がいます。しかし、融資が引けるエリアを見極めないと絵空事になってしまうので注意しましょう。
- 投資対象地域:信用組合の支店がある県内主要都市
不動産投資のプロとアマチュアの違い
お疲れ様でした。これで目標と方針が以下のように定まりました。
- 目標:3年で税引前キャッシュフロー250万円を達成する
- 方針:物件総額5000万円分を2−3棟に分けて購入する
- 自己資金:極力融資利用し、自己資金は取っておく
- 物件価格:1000〜2000万円
- 表面利回り:16.7%以上
- 建物構造:木造アパート(耐用年数超過もOK)
- 金融機関:地元の信用組合
- 借入利率:2.1-2.5%
- 借入年数:15-20年
- 投資対象地域:信用組合の支店がある県内主要都市
目標と不動産の取得方針を持って次の段階にうつると購入までがすごくスムーズに進むと思います。
今後、数々の物件情報を入手して市況に詳しくなったり、新たな金融機関を開拓した際は、適宜条件を変えて軌道修正しながら不動産投資を進めてください。失敗する確率がグンと減りますよ。
これがなんとなく投資するアマチュアとプロの違いです。
目標と不動産取得方針が明らかになった今、あなたは立派な不動産投資家としてスタートラインにたったと言えます。
良い物件が見つかるといいですね!幸運を祈ります!